うちーノート

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道路の設計からクロソイド曲線を考える【クロソイド曲線】

 

 

はじめに 

全記事をまとめてあります.

ぜひ下のリンクから確認してください.

uchii-memo.hatenablog.com

 

この記事の目的:クロソイド曲線とは何か理解する. 

 

高速道路の曲線

高速道路のジャンクションやインターなどの設計には数学的な曲線が使われている.

今回は道路の設計に使われている曲線について考える.

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問題

突然ですが,以下の問題を考えてみます.

東西に伸びている高速道路と北南に伸びている高速道路を接続します.

このとき,どのような曲線で2つの道路を結ぶのが最適か.

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実際に道路を設計する場合には様々な制約がつくでしょうが,それらは無視して数学的にどのような曲線が最適かを考えることにする.

 

走りやすい道路とは

道路設計の本質は,いかに「走りやすい道路」を作るかということ.

ここで「走りやすい道路」の条件を考えることにする.

 

曲がり具合大きい場合,ハンドルを大きく切る必要がある.

・また曲がり具合が小さい場合,ハンドルは小さく切るだけで良い.

 

ようするに「走りやすい道路」とは,曲がり具合が小さい道路である.

 

また,曲がり具合は,曲率の変化量によって表されることが知られている.

よって,

「走りやすい道路」=「曲率が徐々に増加して,徐々に減少する曲線」である.

 

曲率について知らない方は以下の記事へ.

記事:曲率とは何か考える(曲率半径の計算式を考える)

 

問題の答え

問題の答えは「曲率が徐々に増加して,徐々に減少する曲線」である.

イメージ図を示しておきます.

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円のように見えますが,円とは少し違います.

円よりも曲がりが緩やかな曲線になっています.

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曲率が徐々に増加して,徐々に減少する曲線

=「曲率が一定変化する曲線」

これを数式で表すと,

曲率\kappa(s)のとき,\kappa(s)=as(ただしa=Const.

 

またこのような性質をもつ曲線を「クロソイド曲線」と呼びます.

以下,クロソイド曲線について考えてみます.

 

クロソイド曲線

目的:クロソイド曲線について理解する.

イメージ的な説明

・ハンドルを一定の角速度でまわしたときに進む車の軌道

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徐々に曲がりが急になっていく様子が分かります.

 

数学的な説明

・曲率の変化が一定である曲線

(曲率\kappa(t)のとき,\kappa(t)=at(ただしa=Const.))

 

クロソイド曲線は,媒介変数(パラメータ)表示で以下のように表せる.

{\displaystyle \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \displaystyle{x(t)=\int^t_0 \cos\left(\dfrac{a\theta^2}{2}\right)d\theta} \\ \displaystyle{y(t)=\int^t_0 \sin\left(\dfrac{a\theta^2}{2}\right)d\theta} \end{array} \right. \end{eqnarray} }

  

 0≤t≤3,a=1のクロソイド曲線

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クロソイド曲線と曲率

目的:曲率\kappa(t)=at(ただしa=Const.)になることを確認する.

 

曲率の計算式は以下の記事で解説しています.

今回,計算式の導出は省きます.

記事:曲率とは何か考える(曲率半径の計算式を考える)

 

曲率半径Rは以下の式で表すことができる.

\displaystyle R(t)=\frac{\left\{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2\right\}^\frac{3}{2}}{\frac{dx}{dt}\frac{d^2y}{dt^2}-\frac{dy}{dt}\frac{d^2x}{dt^2}}

 

 曲率\displaystyle \kappa=\frac{1}{R} なので,

\displaystyle \kappa(t)=\frac{\frac{dx}{dt}\frac{d^2y}{dt^2}-\frac{dy}{dt}\frac{d^2x}{dt^2}}{\left\{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2\right\}^\frac{3}{2}} …(1)

 

また,クロソイド曲線は以下の式で表される.

(媒介変数表示)

{\displaystyle \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \displaystyle{x(t)=\int^t_0 \cos\left(\dfrac{a\theta^2}{2}\right)d\theta\, …(2)} \\ \displaystyle{y(t)=\int^t_0 \sin\left(\dfrac{a\theta^2}{2}\right)d\theta\, …(3)} \end{array} \right. \end{eqnarray} }

 

(※) 

(2)より,\displaystyle \frac{dx}{dt}=\cos\left(\frac{at^2}{2}\right)\displaystyle \frac{d^2x}{dt^2}=-at\sin\left(\frac{at^2}{2}\right)

(3)より,\displaystyle \frac{dy}{dt}=\sin\left(\frac{at^2}{2}\right)\displaystyle \frac{d^2y}{dt^2}=at\cos\left(\frac{at^2}{2}\right)

 

(1)に上式を代入して,

\displaystyle \kappa(t)=\frac{\cos\left(\frac{at^2}{2}\right)\cdot at\cos\left(\frac{at^2}{2}\right)-\sin\left(\frac{at^2}{2}\right)\cdot -at\sin\left(\frac{at^2}{2}\right)}{\left\{\cos^2\left(\frac{at^2}{2}\right)+\sin^2\left(\frac{at^2}{2}\right)\right\}^\frac{3}{2}}

 \displaystyle =\frac{at\left\{\cos^2\left(\frac{at^2}{2}\right)+\sin^2\left(\frac{at^2}{2}\right)\right\}}{\left\{\cos^2\left(\frac{at^2}{2}\right)+\sin^2\left(\frac{at^2}{2}\right)\right\}^\frac{3}{2}}

 =at

 

\therefore \kappa(t)=at

よってクロソイド曲線の曲率は一定に変化することがわかった.

 

(※)定積分で表された関数の微分

\displaystyle f(x)=\int^x_a g(t)dt について,

\displaystyle \frac{df(x)}{dx}=\frac{d}{dx}\int^x_a g(t)dt=g(x)

(証明)

g(x)の原子関数の一つをG(x)とおく.

\displaystyle f(x)=\int^x_a g(t)dt=G(x)-G(a) なので,

\displaystyle \frac{df(x)}{dx}=\frac{d}{dx}\{G(x)-G(a)\}=g(x)

 

クロソイド曲線と曲率(図)

目的:クロソイド曲線の曲率は一定に変化することを図で確認する.

 

 0≤t≤3,a=1のクロソイド曲線を考える.

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t=1のとき,R=1,\kappa=1

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\displaystyle t=\frac{3}{2}のとき,\displaystyle R=\frac{2}{3},\kappa=\frac{3}{2}

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t=2のとき,\displaystyle R=\frac{1}{2},\kappa=2

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\displaystyle t=\frac{5}{2}のとき,\displaystyle R=\frac{2}{5},\kappa=\frac{5}{2}

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徐々に曲率半径Rが小さくなっていることがわかります.

 

まとめ

・クロソイド曲線は曲率が一定変化する曲線である.

 

最後に

全記事をまとめてあります.

ぜひ下のリンクから確認してください.

uchii-memo.hatenablog.com