うちーノート

少しでも数学好きが増えますようにというブログ

解析接続をほんの少しだけかじる【解析接続】

 

はじめに 

全記事をまとめてあります.

ぜひ下のリンクから確認してください.

uchii-memo.hatenablog.com

 

この記事の目的:「解析接続」とは何かわかるようになる.

 

説明の前に

解析接続の説明の前に,この問題について考えてみます.

 

問題

 

1+2+3+4+…=? 

 

普通に考えれば,1+2+3+4+…=\infty

正の無限大に発散することがわかります.

 

しかし,解析接続の考え方で解くと,

\displaystyle 1+2+3+4+…=-\frac{1}{12}

結果が定数で得られます.

 

この結果が得られる過程から,話を進めていきます.

それでは.

 

-1/12の謎

目標:\displaystyle 1+2+3+4+…=-\frac{1}{12}の計算結果を理解する.

SaとSb 

S_aS_bを以下のように定義する.

\displaystyle S_a=1+2+3+4+5+6+…

\displaystyle S_b=1-2+3-4+5-6+…  (S_aの交代級数

 

(S_a-S_b) を考えると,

f:id:uchii-room:20190307001727p:plain

S_a-S_b=4(1+2+3+…)

S_a-S_b=4S_a

\displaystyle S_a=-\frac{1}{3}S_b …(1)

 

Sbの値を考える

\displaystyle S_b=1-2+3-4+5-6…

S_cを以下のように定義する.

S_c=1-1+1-1+1-1+…

 

S_bをずらして以下のように計算する.

f:id:uchii-room:20190307002621p:plain

2S_b=1-1+1-1+1-1+…

2S_b=S_c …(2)

 

S_cも同様にずらして計算する.

f:id:uchii-room:20190307003048p:plain

2S_c=1

\displaystyle S_c=\frac{1}{2} …(3)

 

式(2)(3)より,

2S_b=S_c

\displaystyle\therefore S_b=\frac{1}{4} …(4)

 

Saの値を求める

式(1) \displaystyle S_a=-\frac{1}{3}S_b 

式(4) \displaystyle S_b=\frac{1}{4}

 

(1),(4)より,

\displaystyle S_a=-\frac{1}{12}

\displaystyle \therefore 1+2+3+4+…=-\frac{1}{12}

 

\displaystyle 1+2+3+4+…=-\frac{1}{12} が得られた.

 

どうしてこうなるのか

ふつうに考えれば\displaystyle 1+2+3+4+…は正の無限大に発散する.

しかし以上の計算では\displaystyle -\frac{1}{12}の値に定まった.

どこに原因があったのだろうか.

 

原因:

\displaystyle S_c=1-1+1-1+1-1+…=\frac{1}{2} 

わかりやすいポイントはこの式にある.

本来,値は振動するため収束しないはずだが,\displaystyle \frac{1}{2}に収束する結果が得られている.

 

 

等比数列の無限和

目的:\displaystyle S_c=1-1+1-1+1-1+…=\frac{1}{2} について考える.

 

S_c=1-1+1-1+1-1+…

初項a=1, 公比r=-1等比数列の無限和と捉えることにする.

 

ここで等比数列の無限和についてざっとまとめる.

等比級数a_n=ar^{n-1}のとき、その無限和S_\inftyは,

 

|r|≥1のとき:収束しない

 

|r|\lt 1のとき:\displaystyle S_\infty=\frac{a}{1-r}

 

 

\displaystyle S_\infty=\frac{a}{1-r}|r|\lt 1のときにしか保証されていない.

つまり,|r|≥1のときは使うことができない式である.

 

 

今回の数列S_cは,|r|≥1であるため,\displaystyle S_n=\frac{a}{1-r}は使えない.

しかし今回は試しに使ってみることにする.

 

\displaystyle S_n=\frac{1}{1-(-1)}=\frac{1}{2}

\displaystyle S_c=1-1+1-1+1-1+…=\frac{1}{2}と同じ結果が得られた.

 

つまり,数列S_cは本来収束しないが,もし収束すると仮定して計算したところ,

その収束値は\displaystyle \frac{1}{2}になるらしい.

 

結論

\displaystyle 1+2+3+4+…=-\frac{1}{12}になる原因をまとめる.

 

\displaystyle S_c=1-1+1-1+1-1+… の計算について,定義域|r|\lt 1にのみ成立する式,\displaystyle S_\infty=\frac{a}{1-r}に対して定義域を勝手に拡張して計算したため.

 

|r|\lt 1のとき、\displaystyle S_n=\frac{a}{1-r}

↓(勝手に拡張)

r\in \mathbb{R}のとき、\displaystyle S_n=\frac{a}{1-r}

\displaystyle S_c=1-1+1-1+1-1+…=\frac{1}{2} が得られた.

\displaystyle 1+2+3+4+…=-\frac{1}{12}

 

解析接続とは

目標:解析接続をイメージでつかむ.

 

ようやく解析接続の話です.

解析接続:定義域の限定された関数について,その定義域を拡張して考えること.

 

本来,定義域を勝手に拡張することはできないが,もし拡張できたらどうなるかを考える.

 

\displaystyle S_\infty=\frac{a}{1-r}a=1, -1\lt r\lt 1

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定義域の拡張

\displaystyle S_\infty=\frac{a}{1-r}a=1, r\in\mathbb{R}

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グラフが伸びたことが確認できます.

言い方を変えれば,解析接続とは「途中で切れているグラフの道筋を予想して伸ばしてあげる」こととも言えるかもしれません.

 

最後に

全記事をまとめてあります.

ぜひ下のリンクから確認してください.

uchii-memo.hatenablog.com